PartVI そしてぴこたんがやってきた!!
「やばい!気を失いそう!!」
嫁が叫ぶ!。
体力と寝不足の限界を過ぎてしまったらしい。
いきなりひっくり返ると危ないので椅子からベッドに移動させる。
しかし、寝たままでは陣痛が始まると耐えられないので、ベッドの背中を高くあげて、椅子状にし、すぐに起き易いようにセットする。
無駄な体力を使わないように陣痛と同時に起こしてあげようと思うのだが、嫁の起きるほうが早すぎて上手く行かない。
仕方ないので、しばらくの間私の肩に寄りかからせ、少しでも睡眠を取らせるようにした。
※背もたれを起こしたベッド
これが分娩台に変形する。
バックに見えているのはトイレの入り口。
このトイレには行くのですら途中で陣痛が来るのだ。
共同トイレだったら大変です。
そんなこんなで、7時頃。
内診するも、まだしばらくかかりそうとのことであった(予想通り)
このころ、となりのLDR で出産が!始まったらしく、一気に外があわただしくなる。
そして、いつしか静かに・・・
「ほぎゃ〜!」
子供の泣き声が廊下に響く。
「あ〜、隣、生まれたみたいだね!」
「かわいい声ね」
「こんどはウチの番だよ!」
「今日中に生まれるかなぁ???」
そして8時の内診。
「後一時間くらいで生まれますよ!」
「おぉ!!!!!!!!(やっと終わる!)」
\(^o^)/
夜中までかかるつもりで気長にかまえていたので、これは本当に嬉しかった。
「誰もが暴れる」と言われる陣痛にも、今の所「間抜け呼吸法」のおかげでちゃんと耐えている。
悲鳴は一度もあげていない。
分監の目盛りもたまにしか振り切っていないので、どう考えても「ピークの陣痛はこれから」だろう。
やっぱり狂ったような大騒ぎが始まってしまうんだろうか?
いよいよラストスパートであ〜る!!
殴られても蹴られてもがんばるぞ〜〜 (>o<)/
なにをされても絶対にお前のこと、嫌いになんてならないからね〜
安心して蹴るんだよ!(なんのこっちゃ?)
「何か甘い飲み物持ってます?これからは体力勝負だから、今のうちに補給しておかないと」
と先生に聞かれる。
「全部飲んじゃって見ずとお茶しかないんです」
と答えると
「ちょっと持ってきますね」
と部屋から出て行った。
直後再び陣痛が襲ってくる。
苦しんでいると、「先生自身が」ニコニコしながらジュースを持って入ってきた。
「どっちが良いですか?」オレンジジュースと缶コーヒーだ。
嫁は陣痛の最中で答えられる状態じゃなかったし、私も、まさか先生自身が持ってきてくれるなんて予想もしていなかったので、けっこう慌てて「どっちでもいいです〜」としか言えなかった。
しかし普通なら看護婦さんに任せるよなぁ。。。
一体どういう先生なんでしょ
ありがたくオレンジジュースを飲んでいると、
「ここは赤ちゃんを寝かせるので、荷物を移動してください」
と、今まで荷物を置いていたカウンターを空ける様に指示が出る。
「ずいぶん気が早いんだな?」と思いながら荷物をどける。
※
ここがそのカウンターである。
確かに、普通のカウンターではなく、クッションが入っていた。
あとで出て来る体重計もここにセットされた。
ちょっとすると急に看護婦さんたちがあれこれ持ってバタバタ入ってきて、テキパキと出産準備が始まる。
「なんだなんだ?」と思っているうちに、嫁さんを移動させながらベッドのシーツをはがし始め、足元ではなにやらベッドを変形させている。
あっという間にフットレスト?が出てきて、分娩台に早代わり。
「すっげ〜!!!」
「いきんでいい?もういきんでいいの??」嫁が言う!
「まだだよ!まだ!」(私)
と言ってると
「だんなさん、見えますか?」
「?」 (なにが?) (?o?)
いつの間にか照明が灯いてる・・・・
よくよく見ると
「!!髪の毛が見えてる〜〜〜〜〜!!!!」
え〜〜〜9時じゃなかったの????
一瞬パニックになる私。
さっき飲んだジュース、まだ消化してないじゃん・・・
(↑訳わかんなくなってる)
「ほら、出てきましたよ!」
「お母さんにも見せてあげて!」
「頭が出てきたよ〜〜!」
慌てて嫁の頭を持ち上げてあげる。
いきなりだったので二人とも半分パニック状態である。
「恥ずかしいからあんまり見ないで」と言われていたので、あんまり見ないようにしながらデジカメを用意。
次に見たときにはすでに頭が半分出ていて、
嫁に「出てきたよ!」
と言ってから再び見ると・・・
「つるっ!」
っと、体が出るのが一瞬見えた。
「ほぎゃ〜!ほぎゃ〜!」
元気な元気な泣き声が部屋中に響く。
よく、テレビなどで逆さまにしてお尻をたたいて泣かせるシーンが出てくるが、全然必要なし。
メチャクチャ元気だ!
ついにぴこたんがこの世に誕生した!!!!!
慌てて生まれた瞬間の時計を撮影し、そして血だらけのぴこたんを撮影する。
※
ぴこたんが母の手に初めて渡された記念すべき瞬間!!
看護婦さんがタオルで軽く体を拭いただけで、すぐに嫁に抱かせてくれる。
「あ〜〜っあ〜っ!!!」嫁は子供を抱きながら泣いている。
私は生まれた瞬間からすでに泣いていた。
ポロポロ涙を落としながら必死で写真を撮り続けた。
泣いたというよりも、涙が自然に出てくる感じ。
何で泣いてるのか自分でもよくわからない。
涙がひたすら出てきて止まらない。
しかし、ぴこたんには悪いが、単純に出産に感動したのとは違うらしい(当然それもあるけど)
どちらかと言うと、ここまでがんばった嫁さんに感動したのかな?
それとも「ようやく終わった」と気が抜けたか?
上手く表現できないけど、この世のすべて、何もかもに感動していた・・・
ずっと前から「無痛分娩がいい」と怖がっていたのに、まったく暴れることもなく、叫び声もあげず。
13時間も子供のために耐え続けた嫁。(昨夜からだと20時間だ!)
1時間に1回は私に「大変でしょ、ごめんね」と謝っていた嫁。
生んだ直後ですら「(ベッドを)汚しちゃってごめんなさい」って先生たちに謝っていたっけ。
みんなビックリして目が点になってたよ。
あの状態で周りに気を使えるなんて、やっぱりお前はすごい奴だよ・・・
看護婦さんがぴこたんを受け取り、我々の目の前で産湯に入れてくれた。
産湯につかってます(慌てて手ブレしてしまった)
体を拭いて体重計へ
3146グラムであった。
そして、服を着させて再び嫁さんの腕の中へ
もう嫁さんには子供しか目に入らない。
私はそれを撮影しまくる。
ようやく私が抱っこする番がやってきた。
「かわいい!!」
「軽い!」
「柔らかい!」
「・・・・」(言葉にならない)
そして、いつの間にか部屋を片付けたら、「後でもう一度連れてきます」と言って、ぴこたんを連れてみんな出て行ってしまった。
あと2時間ほどこのままここで、体を休める必要があるらしい。
やっぱりLDRって楽だ。
静かだ。
とっても静かだ。
この部屋に入って以来、ずっと陣痛で苦しんでいたのがウソのよう。
まるで耳元の空気がつるつるになったみたい。
「この部屋ってこんなに静かだったんだね」
「それだけ大変だったんだよ。ごくろうさま」
二人で笑いあった。
嫁が義母さんに電話で報告している。
私は横で聞きながら、人生最高の幸せに満たされていた。
やっぱり母親ってすごいな〜!
しばらくすると、ベッド寝かされたぴこたんが運ばれてきた。
あっけなく人生最高の幸せが更新された(笑)
それまでの静寂がこわれ、部屋中が子供色に染まる。
時々くしゃみしたり、あくびしたり。
なんともかわいい!
出産の感動がさめないまま
子供とずっと一緒にいられる幸せ。
たまりません・・・・
10:30を過ぎて病室に移動する。
さすがにここからはぴこたんは新生児室に移される。
しかし、部屋のテレビで新生児室の様子が見えるので、嫁と二人でずっとそれを見ていた。
話はつきない・・・