出会い
しばらくの間家捜しを凍結させた我々は、ようやく籍を入れる日を相談したり、新婚旅行はどうする?などと相談しながら、たまに物件情報を見る程度にしていた。
そんなある日
なんと、南向き980万という物件が出た。
「これは安い!」
早速見に行くと
建物正面に電信柱があって防犯的には良くないが、建物もわりときれいでそのままでも十分住めそう。
これはお買い得と喜んで周囲を歩くと、すぐ裏に小学校があるし、閑静な住宅街で雰囲気も悪くない。
問題は徒歩22分の距離
かなり前向きに期待しながら、とにかく駅まで歩く。
と、遠い・・・
歩けども歩けども、一向に駅に着かない
ようやく駅に着いたときには疲れていて、再び物件まで歩いて帰るのが嫌になるくらい。
気合を入れなおして物件まで歩いて戻る。
やっぱり遠い。
果てしなく遠い・・・ (ToT)
途中で嫁が「買うのやめよう」と泣きを入れる。
めったにない格安物件だからとあきらめ切れない私だったが、物件にたどり着く手前でやっぱり力尽きた。。。
バス停も結構遠いし、自転車を借りるにしても、二人で借りると5000円/月位
って事は年間6万。
子供でもできて、4人で通勤でもするなら年間12万である。
だったら、その分ローンを払ったほうが正解だ。
遠すぎる物件はやっぱり不利である。
そのすぐ後、980の物件から5分くらい駅よりに、妙に捨てがたい物件を発見!
北K駅徒歩17分である。
これくらいなら許容範囲か!??
築30年近くだが、一度リフォームしていて外見は汚くはない。南東向きで日当たりは良さそう。。。
駅からちょっと遠いし、その割には1280万でちょっと高いのがネックだ。
もし年末になって売り値が下がったら買おうか?などと話していた。
と、同時に、すぐ近くに1350でもっと広いのもあった。
外壁だけは塗り直したばかりだが、他はリフォームしていないらしくかなり古い。
しかし、西日はいやと言うほど当たるし、袋小路の突き当たりの家なので、敷地が100uあるのが魅力。
また、裏の水路を渡って駅まで近道できる。15分は切るようだ。
難点は、車を入れるのに、接道が2mしかないのでちょっと狭いのと、植木がいっぱい生えていてそのままでは車が入らないこと。
それと、後で気づいたのだが、かなり傾いていた。
隣の家などは更に激しく傾いている。
これは激しく減点だ・・・
こちらも安くなったら狙ってみることにして頭の片隅に置いておく。。
どうやら年末のローン減税の締め切りに向けて、物件が出始めたようである。
そうこうしているうちに、さらに駅寄りに1680万で角地の物件が出た。速攻見に行って気に入ったのだが、後で連絡すると、すぐに売れてしまったとの事。
このくらいの金額の物件は出にくいだけにすぐに売れてしまうそうである。
残念
なんて事をやりながら、近くに行くたびに眺めにいっていたある日のこと。
「おっ!?」
あの家に人がいるではないか。
どこからどう見ても普通のおばさんである(笑)
どうやら売主じゃないか???
あわてて車に戻り様子をうかがう。
花壇をいじくったあと、ゴミを自転車に乗せてゴミ置き場へ向かってゆく。
ゴミを捨てるとをこっちに戻らずに、向こうに去って行く。
そして、なんと、すぐ目の前の新築に入って行くではないか。
やっぱり売主だ〜 \(^o^)/
どうやら金に困って売った訳じゃないし、変な人でもない。
これなら安心できそうだ。
しかも名前までわかってしまった。
これ以来、二人の間でこの家は「Mさんち」と呼ばれる様になった。
もしここを買うなら、直に交渉すれば仲介料が節約できるぞ・・・
「いきなり「ピンポン」しに行こうか?」
「で、「お宅を売ってください!」っていきなり頼むか?」
などと盛り上がる。
しかし良く考えたら、新築を買ったときの不動産屋がそのまま仲介に入っているだろうから断れないよな。
それに良く考えたら買値1000万とすると仲介手数料は双方からたったの33万づつ。
だったら、変な事をするよりも素直に仲介してもらったほうが後くされなくって良い。
せっかく売主が見つかったのに残念だが、そのくらい払ってあげないと仲介業者がかわいそうだよな(笑)
また別のある日(なんだかんだ言っても結構来ているんだ)
向かい(南側)の家を修理しているおじいさんがいた。
話をすると、はす向かいの工務店の人であった。
なんと、南側正面の家はその人が買って、取り壊して駐車場にするそうである。
チャ〜ンス!!! o(^o^)o
駐車場になれば日あたりも良くなるし、車だって入れ易くなる!!
売るときだって売りやすくなるよな。
土地柄も良いし、「安いよ!買っちゃいなよ!!」と、その道のプロに言われてしまうと、結構その気になってくる。
最低限、このおじいさんは良さそうな人だし、プロが買うんだから、土地柄も悪くないはず。
ついでに、1350が傾いているが地盤が悪いのかと聞いたら、
「この辺りは昔田んぼだったからあの辺は傾くんだよ」
との事である。
念のため、Mさんちを良く見ると、
こっちもなんだか傾いているみたい・・・
|)゜0゜(|
おじいさんに「これ、傾いてますよね」と聞くと、
「ちょっと傾いてるかも知んね〜な〜」
基礎を見ると割れているし、良く見ると明らかに傾いている。
しかしおじいさん、「家は人が住んでいれば痛まないよ」
「少しくらい傾いていたって、壁があれば大丈夫!(笑)」
非常に気楽に言われてしまった。。。
でも、なんか安心した。
12/12(金)
ついに婚姻届を提出。
晴れて夫婦となる。
12/13(土)〜14でプチ新婚旅行で伊豆へ
12/20(土)今日は仕事なので、夜出でスキーに行く予定。
朝イチで何気なくネットで検索したら、「1350」と「Mさんち」と、両方とも値下がりしているではないか。
あわてて家で寝ている嫁に電話して業者に連絡してもらった。
そして、私が仕事が終わるまでの間に日当たりのチェックや、中を見せてもらうように頼んでおいた。
急いで仕事を終わらせ、現地に駆けつける。
電話で嫁と話すと「Mさんちは思った以上に傾いてる〜」
ってちょっとびびった感じだった。
駅に着くと、営業のK板氏と迎えに来てくれるはずだったのが、来ていない。
嫁に電話すると、1350の方を見ているのでそっちに歩いてきてくれとの事。
何度も行ってるので、すでに道は熟知している(笑)
1350に到着すると、ウチの嫁はすでに営業さんをK板君と呼んでタメ語で盛り上がっているではないか。
恐るべ〜し!ウチの嫁・・・
そして、中に入ると・・・
見た目どおりやっぱり傾いていた。
地盤はあまり傾いておらず、建物が平行四辺形に傾いている感じ。
嫁の話では、Mさんちは床ごと傾いているので、どっちがマシか?って究極の比較となるらしい。
しかし、こっちは1階のプランが悪すぎ、多少のリフォームではどうにもならないほど融通の効かないプランである。
しかも、キッチンの真上に階段があってしかもかなり急なのだ。。。
これはちょっと怖い。
LDKの床もPタイル(学校などで良く使っているもの)貼り。古っる〜いアパートなどでは使っていたんだよなぁ。
まるっきりレトロな家だ。。。
2階にあがると、6帖二間+窓際に細長い6帖の板の間と、まるで旅館のような間取りである。
眺めているだけで嬉しくなってくる。大勢呼んで宴会をやるときなどは良いだろうな。
しかし、実際に住む事を考えるとやっぱり辛い。
リフォームのやりようがないのが致命的。
K板氏も「向こうを勧めます」との事。
嫁も「Mさんちの方が良いよ」と言うので、K板氏と3人でMさんちに移動する。
こちらの間取りは4LDKとお手ごろである。
さて、リビングに入ると・・・
「お〜傾いてる〜〜〜〜!!!」
すごい!すごい!
1350の比じゃない。
物を転がすまでもない。
あまりの傾き方に、嫁と二人で大笑い。
K板氏の話では、裏のマンションを工事したときに一気に傾いたらしい。
なので、奥に行けば行くほどマンションに近づくためか、傾斜が急になる。
廊下も、下りは気にならないのだが、登りは笑ってしまうほど登っている。
一番奥のキッチンなど、コンロに向かって下がっているので、かなり怖い。
料理中にバランスを崩したら大やけどである。
Mさんはずいぶん我慢してたんだろうな。
ちなみに、増築部分の和室は大して傾いていないみたい。
古いほうが傾いている。
2階に上がって、増築部分の洋室。これも我慢できる範囲。
リビング上の和室6帖は結構傾いている。
そして、極めつけはキッチン上の和室4.5帖。
猛烈に傾いている
「下がっているほうに向かって壁に顔を付けて立ってみて」
と言われてそうすると
「おー!!!!マジィ???」
軽い恐怖を感じるくらい傾いている。
大騒ぎしながら立ったりしゃがんだりしていると、思わずよろけて壁に手をつく。
「お〜〜〜!!!!なんじゃこりゃ〜〜」
もう大爆笑。
目をつぶって柱に向かって「気をつけ」をして、目を開けると上下で5センチ以上はズレている
あっちこっちのドアは自動ドア。
K板氏も笑いながら
「ビックリハウスだと思ってください!」
悪乗りするヤツだ(笑)
話を聞くと、今まで何人も案内したが、この傾きを見て即NGだったそうだ。
われわれが怖がらずにバカウケ(古っる〜)しているので嬉しいみたい。
更に色々聞きだす。
「実はMさん見かけた事があるんですが、新築を買って手放すんですか?」
「そうです」
じゃ、担保なんかは入ってるんだ」
「いいえ。現金で買ってるので、担保には入ってません」
「すっげ〜!金持ち〜!!」
これならトラブル可能性もない。
訳あり物件の話をして、確認すると
「多分ここでは誰も死んでないと思いますよ」
「お〜〜〜」 \(^o^)/
「更地にして土地だけで売ったほうが逆に売れるんじゃないですか?傾いてるのわからないし(笑)」
と聞くと
「そうですよ。でも、まだ住めるしもったいないですからね」
「これで売れなければ更地にするつもりでした」
意外に正直なやつだ(笑)
朝の時点では買う気満々だったのだが、あまりの傾き方にさすがにビビる。
しかし、リビングと増築側の2部屋はかなりきれいでそのまま住める。
キッチンは狭くて汚いが、ちょうどわが社のショールームの商品入れ替えで「システムキッチンほしい人〜」などと募っていたので、安くリフォームできるかも?
だったら、リビングの床も治してしまえばちゃんとした生活ができるぞ!
などと、一瞬の間に計算する。
しかし、ここまでK板さんと仲良くなってしまってシビアな交渉ができるものか???
買う気があるのは見え見えだ。
だいいち、売れないので値下げした直後なのだ。
「値引きできますか?」
「良いですよ、いくらなら良いですか?」(二つ返事)
最初は安めに言って交渉するつもりで
「100万引き」
というと
「わかりました。そのくらいならのんでくれると思います」
「へっ???」 (・o・)人(・o・)
あっさり決定・・・
「もうちょっと引かないかな?」と聞くと
「さすがにそれはかわいそうですよ」と言われてしまった。
とっくに路線価は調べてあった。
非常に大まかに、売値の8掛けが路線価の目安と言われている。
Mさんちの場合、路線価を1.25倍すると売値を超えていた。
そこから更に100万引きである。
きわめて路線価に近い金額となってしまった。
(これなら、土地代だけだぞ)ボソッ
(すぐに手放してもあんまり赤字にならないよな?)ボソッ
(最悪、更地にして売れば買った値段くらいで売れるかも?)ボソボソッ
(リフォームもウチでやれば安いし)ボソッ
(もしなにかあったら、いつでもウチの大工が来てくれるよ)ボソボソッ
「OK!申し込みます!」 (>o<)/
一瞬で決定!
その場で申込書に記入する。
やっと納得できる物権が見つかった。
しかし、前回の事があるので最後まで油断は禁物。
ま、これだけ傾いていたら、普通の人は手を出さないって(笑)